今回ご紹介する「三田会にゆかりのある会議通訳者in Singapore」は、西貴代美(にし きよみ)さん。1990年に文学部を卒業、1992年に来星し、1998年にシンガポールに帰化。現在、日英会議通訳者としてシンガポール及び近隣諸国でご活躍されています。そんな西さんに、先日取材チームがOrchardのTanglin Clubでお話を伺ってきました。西さんは、日本/シンガポール/アセアン/欧米の大臣をはじめとする要人の通訳や、法廷通訳、国際会議の同時通訳、そして海外IR(上場企業のCEO/CFOの海外機関投資家との面談)の通訳など、精度とマナーが求められる責任の重い案件に日々従事していらっしゃいます。通訳学校に通う機会の無かった西さんは、まずは2000年に展示会通訳でデビュー。その後2004年に法廷通訳デビュー、2007年にIR通訳、そして国際会議の同時通訳デビュー。1つ1つの案件に真剣に取り組み、ご利用者と先輩諸氏に認められて少しずつ難易度の高い仕事を任せられながら、アセアンで有数の会議通訳者としての地位を築いてきました。皆様もお馴染みのTPP/CPTPP交渉、シャングリラ会合(アジア安全保障会議)などでも、西さんの声を各国大臣が聞いていらっしゃいます。さぞや幼少期から海外に居住されていたか、大学の語学専門学科を履修されているかと思いきや、大学の専攻は社会学とのこと。ただIIR(Institute of International Relations)というサークルに入り、交換留学のお手伝いをして、多くの海外育ちのサークル仲間や留学生との交流をされていらっしゃいました。シンガポールには、勤務先の会社から新規事業立ち上げ要員として送られましたが、バブル崩壊により勤務先は1年で撤退を決定。西さんは帰国せずにシンガポールで転職し、その後シンガポール人と結婚して退職。そして、「通訳しましょうよ」と誘ってくれていた大先輩の言葉を思い出し、エージェンシーに登録。ビジネス、金融、国際仲裁などのハブとしてのシンガポールの成長の波に乗り、先輩方から通訳技術やマナーなども学びながら、会議通訳者として成長し続けました。西さんは、フリーランス会議通訳者として自分の腕一本でキャリアを積み上げられてきました。これからの展望は「AIに勝ち続けていきたい」とのこと。「機械翻訳の精度も読み上げる機能も日々向上し、ユーザー様が『機械か人か』と選べるようになった時、『西さんに通訳してもらえるのだったら、機械でなく西さんにお願いしたい』と選んで頂けるよう、訳出の精度は勿論、機械からは得られない、西通訳ならでは要素も磨いていきたい」とおっしゃったことが印象的でした。西さん、取材どうもありがとうございました!三田会にゆかりのある〇〇in Singaporeで、こんな方を取材してはというアイデアがありましたら、取材チームまでご一報下さい。 取材チーム(アイウエオ順)磯田誠一郎、今泉寛(Lead)、酒井祐輝、田代いくえ、常木佳子(サポーター)、新村博道、宮本敬太