今回ご紹介するのは「三田会にゆかりのある俳人(俳句を詠む人)in Singapore」、杉原浩之(すぎはら ゆし)さんです。1995年中等部、1998年志木校、2002年文学部史学科を卒業され、2023年に来星して当地の法人にて勤務されています。歴史好きの文学青年として大学に入学した杉原さん。先輩に誘われて参加した新宿御苑での新入生歓迎会が、慶應義塾大学俳句研究会(慶大俳句)慶應義塾大学俳句研究会 - Wikipediaで、俳句を7句詠まないと帰れないと言われ、でもそこがとても楽しくて、三田の部室に通うようになったのが俳句を始めたきっかけだそうです。主な活動は週1回の句会と俳句のネタを探しに行く月一回の吟行会。句会は、結構スパルタで、5,6名部員同士で、多く句を作り多く捨てる(多作多捨)。リズムをつかむ「素振り」を行う感覚で1日100句作ったこともあったそうです。吟行会は、歴史好きで日本各地を旅する趣味とも合い、もともと文学好きでなくとも、俳句の短さ、定型、季題などルールに則るところ、多作多捨も自分にあって俳句にはまっていたとのこと。当時の慶大俳句は、高浜虚子の花鳥諷詠の流れをくむ伝統俳句で、客観写生(客観的に、生きているものを写し出す)をベースに希題(季節の題目)を詠み、詠んでいるうちに自然と主観が出てくるスタイル。慶大俳句のメンバーは、それぞれの俳句の作り方や主義の違いを認め合い、つながりを重視。俳句に携わる人を増やし、俳句を多くつくり、これはという俳句を選び、弟子を出し続けている環境とのことで、以前シンガポール三田会にも2名先輩がいらっしゃったそうです。なお、慶應義塾には、大人になって俳句を始めた塾員も参加する三田俳句丘の会(三田校舎北門の文学の丘にちなんで)もあるそうです。卒業後も俳句を続け、俳句に魅せられ早25年、俳句ノートも139冊目。お勤め先では、防衛装備品関係の仕事をされていて、レーダーが設置されるような遠隔地への出張も多く、真冬の佐渡島で積雪の山を登るような出張などは吟行会のようでとても楽しかったそうです。通勤時に目にする梅の花も、青い状態(青梅)、熟れている状態(熟れ梅)、落ちた梅(落ち梅)もあるように、季節の移ろいも愛でていらっしゃいます。多くのOB先輩からは、俳句の技巧的というよりは、言葉が授かるというか、頭でつくってない成熟さを学び、俳句を通して自身が年齢を重ねていくことはいいなと感じているとのこと。シンガポールには四季がなく、俳句をする人は確かに少ないですが、今はオンライン句会もあり、ここでも俳句を楽しめるとのこと。最近では8月7日の立秋に、マリーナ地区の風にふと秋を感じられたそうで、常夏のシンガポールでも季節を先取りして句を詠んでいらっしゃいます。これからも、プール、水泳、パラソル、サイダー等の季題でシンガポールならではの俳句もつくっていきたいと仰っていました。杉原さんは、句集を2冊(『先つぽへ』『十一月の橋』)を出版されていて、シンガポール日本人会の図書館にても借りられます。杉原さん、取材にご対応頂きどうもありがとうございました!三田会にゆかりのある〇〇in Singaporeで、こんな方を取材してはというアイデアがありましたら、取材チームまでご一報下さい。取材チーム(アイウエオ順)磯田誠一郎、今泉寛(Lead)、酒井祐輝、田代いくえ、常木佳子(サポーター)、新村博道、宮本敬太